阪奈の家-リノベーション 竣工

昨年の秋から設計を始め、5月より工事をおこなっていた『阪奈の家』のリノベーションが竣工しました。

この家は34年前に建てられた、高低差のある約700坪の敷地・延床面積158坪の大邸宅で、随所に上質な素材が使われた丁寧な設計の住宅でした。オーナーもご高齢になられ足の具合も悪くなってきたので、今回バリアフリー化とともにコンパクトに安心して暮らせる空間へとリノベーションすべく、依頼がありました。

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リノベーションの主な内容は、下記の5項目。

1.車いすでアプローチする敷地内通路のバリアフリー化

2.車いす用玄関の新設

3.リビング・ダイニングに隣接する客間(和室)を主寝室に変更

4.新しい寝室に隣接するトイレの新設

5.各所の手摺追加

 

1,2に関しては既存の玄関に階段があり、スロープを付けることも難しい勾配でした。そこでアプローチに距離のある勝手口として使っていた出入口を利用する方向で検討を進めました。比較的小さな勝手口を車いすのまま出入りできる玄関とするために、勝手口前の軒下にガラスBOXを挿入するように大きく解放的な空間をつくり、そこを新しい玄関としました。

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3.の既存客間は舟底天井の純和風の8畳間で特に天井は上質な突板と竹で組まれた良い意匠でしたので、壁・天井は基本的に残し、床をフローリングに、床の間を車いす対応の洗面化粧台に、そして押入を抜いて新しい玄関・トイレへの動線に利用するために変更を行いました。フローリングは壁・天井の和風の意匠に合うように竹材のものを選定。洗面化粧台はLIXILの既製品ユニットをばらしてシオジの無垢材で作ったカウンターに組み込みました。大きくとった鏡が空間を広く見せています。

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建具は既存の障子を基本的に利用していますが、ダイニングとの間の襖は防音性を高めるために新調しました。杉の柾目板を千鳥格子に組み内部に防音材を充填しています。この格子は他の部屋の建具や間仕切りに共通して使われている意匠を引用し、既存のまま改修しない部屋とも馴染むように配慮しています。

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照明器具は伊東豊雄デザインのMAYUHANA(ヤマギワ)を採用しました。グラスファイバー製の蚕の繭のようなデザインは和紙のようでもあり、和と洋を結びつける意匠になっています。

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4.に関しては、TOTOの介護用シャワー・トイレユニットのオクタゴンシリーズを採用しました。まだ既存の浴室での入浴が可能ですが、将来的に浴室での入浴が難しくなった時に、腰掛けながらシャワーを浴びることができるユニットがバリアフリートイレと一緒に組み込まれているものです。

 

既存意匠の完成度が高かったので、それを崩してデザインすることはなかなか難しい作業でしたが、和と洋とバリアフリーの各要素を再編集し、老後の新たな上質な生活を送る空間を形成することができたのではないかと思います。

 

 

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